子どもがワクワクする書写授業とは
いざ、書写授業を担当することになったが、「私は字が下手。手本も見せることができない。一体どうやって教えたらいいのだろう」なんて、悩んでいる学校の先生は、たくさんいると思います。
大丈夫です。
今から私がお伝えする授業を実践すれば、誰でも「子どもたちがワクワクする書写授業」になります。
字が下手なあなたでも大丈夫です。子どもに実施したアンケートより「授業満足度アップ」は明らかです。
1 子どもがワクワクする書写授業とは
先日、私は次のようなツイートをしました。
そうなんです。「子どもがワクワクする書写授業」は、ずばり、次の8つを子どもにさせることなのです。
- (1)今の力で「清書」させる
- (2)上手に書くポイントを教科書で確認する
- (3)良い手本・書き方を動画で確認する
- (4)「かご書き」練習をさせる
- (5)「ほね書き」練習をさせる
- (6)「清書」をさせる
- (7)選択学習
- (8)前後の良い変化を交流させる
この8つを4〜5時間くらいで取り組ませます。
- 1時間目(1)(2)
- 2時間目(3)(4)
- 3時間目(5)(6)
- 4時間目(7)
- 5時間目(8)
- ※(8)については、お題が数枚集まった時点で行う場合も可能です。
この授業手順で進めていくと、子どもたちが書く字は、格段に上手くなります。友達からの良い評価ももらえ、自己肯定感も高まります。すると、「またがんばろう」「書写の授業が好きかも」と変化していくのです。
では、8つの手順を1つ1つ述べていきます。
(1)今の力で「清書」させる
学校での学びで大切なことは、自分の伸びを確認することです。「あっ私、どんどん成長している」と実感できれば、自己肯定感や学習意欲も高まります。学習がどんどん楽しくなっていくのです。
であれば、自分の伸びを確認できるシステムを作ることが大切です。そこで、新たな「お題」を書写する際、一番初めの字を記録しておくようにしています。
- 私の場合、
- 半紙を2枚渡し、上手に書けた方を教師に提出させます。
- その際、写真に撮って記録するようにしています。
- ※ちなみに欠席している子は、(2)の授業までに、休み時間や放課後等に書かせます。
(2)上手に書くポイントを教科書で確認する
次に「お題」を上手に書くポイントを教科書で確認します。
このポイントとは、「教科書」に書いてある「書写のカギ(教科書会社ごとに呼び名は変わります)」のことです。
ここで子どもに意識させたいことは、上手に書くポイントを「言葉で理解する」ということです。
- (例えば)
- お題が「道」の場合は、
- 「にょう」の上に乗る部分の右側が少しあくように、
- 「にょう」の「右はらい」を長く書く。
- お題が「白馬」の場合は、
- 画数の少ない漢字や、「口」や「囗(くにがまえ)」のような形の
- 漢字は、ほかの漢字よりも小さく書く。
などです。私は教科書に線を引かせたり、書かせたり、唱えさせたりして、学期末に小テストをしたりして、覚えさせています。
(3)良い手本・書き方を動画で確認する
次は「お題」の書き方を動画で見て確認します。ここで子どもに意識させたいことは、上手な書き方を「目で理解する」ということです。
ここいう動画とは、指導書についているDVDや教科書会社のホームページに掲載されている動画です。
書道家が、「書写のカギ」を解説しながら「お題」書いている動画になります。実際に、「始筆」「送筆」「終筆」の動きが分かります。※上手くかける自信がある教師の方は、実際に黒板に書いて教えてあげてください。
私は、教室全面に大型テレビを持ってきて、動画を見せています。毎回、子どもたちは本当に集中して動画を見ています。
(4)「かご書き」練習をさせる
次は「お題」の練習です。まずは「かご書き」練習をさせます。良い手本をなぞらせるのです。
ここで子どもに意識させたいことは、上手な書き方を「体で理解する」ということです。
この「かご書き」とは、上手な手本を縁取ったものをなぞるというものです。「かご書き」させるポイントは、
- 二度書きはしない
- 一度書きで「はみ出さず」「ぴったりなぞる」ことです。
これがしっかりとできれば、
- 点画の入り方(始筆)
- 筆の送り方(送筆)
- 点画の終わ方(終筆)
- 良い「筆圧」を体で感じて覚えることができるのです。
私は、この「かご書き」を合計4〜5枚させます。廃棄用のプリント等に印刷したものを使用しています。
(5)「ほね書き」練習をさせる
次も「お題」の練習です。まずは「ほね書き」練習をさせます。これも良い手本をなぞらせる練習です。
ここでも子どもに意識させたいことは、上手な書き方を「体で理解する」ということです。
この「ほね書き」とは、上手な手本の「始筆」「送筆の中心線」「終筆」が書かれたものをなぞるというものです。「かご書き」と違って、「ほね書き」は、筆圧を自分で調節する必要があります。「かご書き」で覚えた筆圧を、「ほね書き」では自分で調節して書くのです。
「ほね書き」させるポイントは、
- 二度書きはしない
- 筆圧は自分で調節することです。
私は、この「ほね書き」を合計4〜5枚させます。廃棄用のプリント等に印刷したものを使用しています。
(6)「清書」をさせる
いよいよ清書です。これまで上手く書くポイントを「言葉」「目」「体」で理解してきました。その成果を発揮させる時間になります。
ここで子どもに意識させたいことは、「手本と全く同じ字を書く」ということです。
清書には「自分の名前」も書かせます。名前の手本は「教科書体フォントで名前を印刷し、パウチしたもの」を使います。※私がもう少し上達したら、一人ひとりに実際に書いた手本を渡してあげたいと思っています。
清書させるときのポイントは、
- 自分が書いた「ほね書き」の中で一番良いものを手本として横に置いて書く。
- 手本を見て、位置を確認しながら書くです。
- 半紙を2枚渡し、上手に書けた方を教師に提出させます。
- その際、写真に撮って記録するようにしています。
(7)選択授業
ここでは、いくつかの選択コースを用意して、取り組ませます。※(6)を欠席している子どもについては⑤を選択させます。
ここで子どもに意識させたいことは、「自分が今、やりたいコースを選択する」ことです。
【コース例】
①基礎習得コース
・止め、はらい、折れ等を習得できる「かご書きワークシート」
②ひらがな練習コース
・「ひらがな手本ワークシート」をなぞる
③カタカナ練習コース
・「カタカナ手本ワークシート」をなぞる
④書家にチャレンジコース
・書家が書いた「お題」を手本に清書する
⑤清書に再度チャレンジコース
・「かご書き」「ほね書き」を数枚練習させた後、清書する。
①〜④を選択した子どもについては、墨を擦らせるようにしています。他の授業では、時間短縮のために「墨液」を使用させていますが、この選択授業(①~④の選択者のみ)では墨を擦らせる経験をさせます。子どもたちは、「水を入れすぎたら時間がかかりすぎる」「これくらいなら色が薄すぎる」など、楽しんで墨を擦っています。
(8)前後の良い変化を交流させる
ここでは、自分が書いた(1)と(6)の作品を比べて自己評価・他者評価させます。これまでの手順で授業すると、子どもの作品は、ほぼ100%上達しています。
ここで子どもに意識させたいことは、「励ましてくれる人がいるからがんばれる」「次の目標を持つ」ということです。
私は、次のような「一人ひとりの作品を貼り付けたワークシート」を使って授業します。
授業の手順は
- ①3〜4人グループを作る。
- ②一人2〜3枚の「ふせん」を配る。
- ③約15分間で、グループ内の友達の「上手くなったところ」を見つけて「ふせん」に書く。
- ④友達に「ふせん」を渡す。
- ⑤友達に書いてもらった「ふせん」を感謝して読む。
- ⑥「自分が上手くなったところ」「次に学習で頑張りたいこと」を書く。
- ⑦クラス全体で発表交流する
- ※⑤の際、書くことが難しい子もいるので、大型画面にこのような「記述例」を示しました。
2 学期はじめに行ったこと
ちなみに、私が学期はじめにやったことをお伝えします。短時間でできますので、ぜひ実践してください。約10分くらいです。作成するのに、準備はちょっとかかりますが、子どもにやる気と見通しを持たせるために大切なことです。
(1)子ども自身の目標を紙に書かせた。
子どものやる気を引き出す方法は、「子どもにやることを決めさせること」が大切です。次のようなワークシートを作成して書かせました。学年末に結果を書かせます。
(2)年間のスケジュールを配布してワクワクさせた。
この1年間、どのような学習をするのか?を明確にすることで、目標や学習の進め方が明確になります。次のような年間スケジュールを配布して説明しました。子どもは、今、どのあたりの学習をしているかが、明確になります。
(3)この一年で習得する「書写のカギ(上手くなるポイント)」を配布して安心させた。
この1年間で、どのような「お題」を書き、「何」を習得しなければいけないのか、を明確にすることで、子どもが安心すると考えました。
3 アンケート結果より
(1)アンケート用紙
図のように「10項目の4件法」の変化を分析したいと考えました。私の授業プラグラムは、書写の関する「好感」「上達感」「生活に生かす」「見通しを持って学習」「向上意欲」「挑戦意欲」「関わり」「授業評価」などにどのような変化を及ぼすのかを知りたいと考えました。
(2)アンケート結果
学期はじめと終わりにとったアンケート結果では、全ての項目のポイントがアップしていました。詳細は論文にして発表する予定です。(発表時には報告します)子どもに実施したアンケートから「授業満足度アップ」は明らかになりました。
4 あなたの字が上手くなくても実践可能です
どうでしたか?このような手続きで授業すると、子どもたちがワクワクして取り組むようになりました。皆さん安心してください。もう一度、確認します。この授業プログラムは、
- あなたが黒板に手本を書く必要はありません。
- あなたが子どもの作品に赤墨で書き込む必要はありません。
- あなたの字が下手でも構いません。
私の字は癖があり、「字がきれい」なんて、生まれて一度も言われたことはありませんでした。しかし、書写の授業を指導することになり、「私自身も子どもと一緒に字の練習をしよう!」と決意できました。
何よりも大切なことは、書写を教える教師こそが、字がより上手くなるためにワクワクして授業に取り組むことではないでしょうか。今回は以上です。