邯鄲の夢 今日から使えることわざ講座 No.209
「邯鄲の夢」の「ズバリの意味」「由来」「使い方」などを、ことわざの達人あらせんがわかりやすく解説します。
読み方
かんたんのゆめ
ズバリの意味
人の世や人の一生の栄枯盛衰が、夢のようにはかないことのたとえ。
あらせんより
- 唐の時代の話です。呂翁という道士(仙人)が、邯鄲という町に向かう途中、ある宿屋の店先で休んでいると、一人の青年が通りかかり、同じ店先に腰をおろしたんです。
- 二人は挨拶を交わし、世間話をはじめました。青年の名は廬生といいました。
- しばらくすると、廬生が、自分のみすぼらしい身なりを見回してため息をつきました。
- 「いつになったら、こんな貧しい暮らしから抜け出せるのか。これではただ生きているというだけではないか」
- すると呂翁が次のように尋ねます。
- 「あなたが望んでいる暮らしとは、どんなものですか?」
- 廬生は間髪入れず、次のように答えます。
- 「そんなこと、決まっています。手柄を立てて出世して、将軍や大臣になって、贅沢の限りを尽くすことです。」
- 「なるほど、では、あなたの望みをかなえてあげましょう」
- 呂翁は、カバンから陶器の枕を取り出し、
- 「この枕に頭をのせて、寝てご覧なさい。あなたの望みがかないます」
- 廬生は、まさかと思いながらも、ちょうど眠気がさしてきたところだったので、店の主人が黄粱(粟の一種)を炊いているのを横目に見ながら、枕に頭をつけました。
- すると、枕の両端には穴があいていたが、頭をつけると穴がどんどん大きく、明るくなっていきました。そこで廬生は、起き上がって穴の中に入ってみました。そして穴から出ると、そこは自分の家でした。
- それから数ヶ月後、廬生はお金持ちの娘と結婚。そして生活が豊かになり、贅沢な毎日を送るようになりました。
- 官吏(国家公務員)の試験にも合格。3年後には首都の長官に就任。さらには国を動かす宰相の地位につくまで昇進しました。
- しかし、廬生の出世をねたんだ者に、騙され、嘘の噂を流され、皇帝から命を狙われます。
- 廬生は「こんな目に合うのだったら、貧しくても昔の暮らしの方が良かった」と妻子に嘆きます。絶望した廬生は剣を抜いて自殺をしようとしますが、妻に止められます。
- 廬生は死罪はまぬがれ流罪になりますが、数年後、無罪が証明され、再び皇帝は廬生を宰相にします。
- 廬生には五人の子どもがいましたが、五人とも才能に恵まれ、官吏として高い地位にのぼり、活躍しました。
- 廬生はその後、50年あまり高い地位をたもちつづけて、並ぶ者のない権勢を誇りました。皇帝からは、豊かな邸宅や土地や名馬を何度も与えられ、廬生は金のかかった衣服を着込み、たくさんの美女にかこまれて、毎日のように豪華な宴会を開いて楽しみました。
- こうして、ありとあらゆる贅沢を味わいつくした廬生でしたが、80歳を越えた頃から健康が衰えてきたが、皇帝から名医がさしむけられ、高価な薬が惜しげもなく届けられました。
- やがて廬生は、皇帝をはじめ多くの人に惜しまれながら、この世を去りました。
- 廬生は、あくびをして目を覚ましました。見れば、そこは宿屋の店先で、呂翁がそばにおり、宿屋の主人は黄粱を炊いていました。黄粱がまだ炊き上がっていません。なにもかも、例の枕に頭をつける前と同じでした。
- 廬生は「夢だったのか・・・」呆然として起き上がりました。
- 黄粱が炊かれているほんのまずかの時間に、自分の一生の夢を見ていたのです。
- 呂翁が言いました。「どうです。人の世の栄枯盛衰とは、こんなものです。」
- 廬生は「わかりました。お教え、ありがとうございます」と。富も栄誉も、結局は虚しいものだと悟った廬生は、呂翁に礼を言って帰っていきました。
- と、こんな話が元になった故事成語です。
- この話が元となり、「人の世や人の一生の栄枯盛衰が、夢のようにはかないことのたとえ」として、「邯鄲の夢」ということばが使われるようになったんです。
- どうです。富や栄誉は幸福にしてくれないという大切な話です。
- 幸福とは何か?をアドバイスしてくれる故事成語。勉強になりますよね。
使い方
- えっ!あの人、見たことある!!
- あんなに人気だった歌手がこんなところで歌っているなんて、まさに邯鄲の夢やなぁ。
- ちゃんちゃん
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【参考文献】
・小学生おもしろ学習シリーズ まんがことわざ大辞典 西東社
・やばいことわざ 監修 齋藤孝 アスコム
・小学生のまんが ことわざ辞典 改訂版 金田一春彦監修 金田一秀穂監修 学研
・小学生のためのことわざをおぼえる辞典 川嶋優編集 五味太郎絵 旺文社
・深谷圭助先生のまんが国語事典 まんがことわざ事典 金の星社
・世界のことわざ比較辞典 日本ことわざ文化学会 岩波書店
・わざわざことわざ事典 国松俊英 童心社