性的マイノリティの基礎知識
「性的マイノリティの基礎知識」について次の流れで述べていきます。
- セクシュアリティの3要素
- LGBTとは
- 性同一性障害について
- 性的マイノリティの子どもたちに起こっていること
セクシュアリティの3要素
セクシュアリティとは、「性のあり方」のことです。3つの要素で説明することができます。 「からだの性」「こころの性」「好きになる性」の3つです。では、一つ一つ説明していきます。
①からだの性
1つ目の「からだの性」とは、生まれた時の性です。 外性器や内性器、染色体なとで男女の差が見られます。 多くの場合、出生時にからだの性をもとに判断して、戸籍上の性別を届け出ます。
②こころの性
2つ目、「こころの性」のことを性自認とも言います。 こころの性は、自分自身の性別をどう認識しているかというものです。
「男性である」「女性である」、 あるいは「どちらでもある」「どちらでもない」と認識している人もいます。
③好きになる性
3つ目、「好きになる性」とは、恋愛や性愛の対象となる人の性のことです。 自分が「男性を好きになるか」「女性を好きになるか」という性的な意識です。
性的な意識が向く方向という意味で「性的指向」という言い方もします。 好きになる性についても「男女の両方を好きになる人」や「どちらも好きにならない人」もいます。 以上、セクシュアリティ(性のあり方)は、この3つの要素で説明することができます。
LGBTとは
ここで「LGBT」について説明します。 「LGBT」とは、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーの4つの言葉の頭文字を併せた言葉です。
直接には、この4つのセクシュアリティを一括して表していますが、広い意味では、すべての性的マイノリティを包括して表す場合が多いです。
では、先ほどのセクシュアリティの要素を使って、レズビアンから順番に説明させていただきます。
L レズビアン(女性同性愛者)
レズビアンは、「こころの性」は女性で、「好きになる性」が女性という人を指します。
G ゲイ(男性同性愛者)
ゲイは、「こころの性」は男性で「好きになる性」が男性という人を指します。
B バイセクシュアル(両性愛者)
バイセクシュアルは、「好きになる性」が異性の場合も、同性の場合もある人を指します。
T トランスジェンダー(FtM)(female to male 女性から男性)
トランスジェンダーは「からだの性」と「こころの性」が一致していない人を指します。 トランスジェンダーのFtMは、女性の体で生まれたけれど、自分が男性だと感じている人を言います。
T トランスジェンダー(MtF)(male to female 男性から女性)
トランスジェンダーのMtFは、男性の体で生まれたけれど、自分が女性だと感じている人を言います。
3つのセクシュアリティを男女の二分法で整理
この表は「3つのセクシュアリティを男女の二分法で整理」したものです。
左から「からだの性」が男性、「こころの性」が男性、「好きになる性」が男性の場合が「ゲイ」です。
左から2つ目が、「からだの性」が男性、「こころの性」が男性、「好きになる性」が女性の場合が「異性愛の男性」です。多数派です。
左から3つ目が、「からだの性」が男性、「こころの性」が女性、「好きになる性」が男性の場合が「異性愛のMtF」です。
左から4つ目が、「からだの性」が男性、「こころの性」が女性、「好きになる性」が男性の場合が「同性愛のMtF(MtFレズビアン)」です。見た目は多数派に見えます。
説明はここまでにしますが、この表はあくまで、男/女の二分法で分けた便宜上のものです。実際には中間領域にいる人や枠組みに当てはまらない人がいます。
エックスジェンダー
エックスジェンダーは、こころの性を男性・女性のいずれかとは認識していない状態を指します。トランスジェンダーの中に含みます。
上から「両性」とは、男性・女性のどちらでもあると自認している人を指します。
「中性」とは、男性・女性の間であると自認している人を指します。
「無性」とは、男性・女性どちらでもないと自認している人を指します。
パンセクシュアルとアセクシュアル
パンセクシュアルとは、「好きになる性」が、全てのセクシュアリティの人が恋愛や性愛の対象となる人を指します。
アセクシュアルとは、いかなる他者も、恋愛や性愛の対象とならない人を指します。
クエスチョニング
クエスチョニングとは、自分自身のセクシュアリティを決められない、わからない、あえて決めない人を指します。
このように、性のあり方は多様です。虹のように様々な輝きを持っているのです。
性同一性障害について
性同一性障害
次に「性同一性障害」について説明します。
「性同一性障害」とは医学的な診断名になります。「からだの性」と「こころの性」とが一致しない状態のことで、自分の身体が自身のものではないような感覚を持ちます。
より広い意味をもつトランスジェンダーに含まれます。
性同一性障害の治療
参考として、性同一性障害の治療について説明します。
対象者が「性同一性障害の治療」を求める場合、「精神療法」「ホルモン療法」「手術療法(外科的治療)」の3つの段階を順番に進めていきます。
性的マイノリティの子どもたちに起こっていること
次に「性的マイノリティの子供達に起こっていること」を話します。
①約9割が中学生までに性別違和を自覚する
1つ目は、トランスジェンダーの約9割が中学生までに性別違和を自覚しているということです。
岡山大学病院を受診した、性同一性障害の診断を受けた人を対象にした調査で明らかになりました。
このことから、小学生、中学生の時期に、 セクシュアリティの基礎知識を学習する必要があることがわかります。
②13歳頃に性的指向に気づき始める
2つ目は、13歳頃に自分の「性的指向」に気づき始めるという事実です。
宝塚大学の日高教授らが実施した調査によると、平均して13歳頃に、漫然と「自分は周りとちょっと違うな」「同性が好きかもしれない」と思いはじめ、17歳頃ではっきりと「自分は同性が好きなんだ」と自覚しています。
この「自覚のプロセス」の4年間に「自殺を考えた」「自殺未遂をした」といったエピソードが生じていることに注意が必要です。
小・中学生の時期に「同性を好きになっても良い」ことを、当該児童生徒に伝える人がいれば、自己受容のプロセスはもっと容易になるはずと考えます。安心させることができると思うのです。
③カミングアウトの相手の多くは同級生
3つ目は、LGBTの子どもたちの多くは、カミングアウトの相手に同級生を選んでいるということです。
高校生以下の子どもたちの約7割が、カミングアウトの相手として同級生をあげています。
教師や大人はLGBTの子どもから相談を受けたことがなくても、子ども同士ではカミングアウトが起きているかもしれないこと、 大人の見えないところで、子どもたちが受容や拒絶を体験している可能性が高いことを想定しておくべきと考えます。
そのためにも、学校を「誰もがLGBTについての正確な知識をもち、肯定的に受け入れることのできる環境」にしておく必要があると考えます。