この記事の3行まとめ
- 最初にかける言葉は「話してくれてありがとう」と「あなたは悪くない」です。
- その日のうちに、子どもの話をメモに残し、証拠を保存します。
- 翌朝までに学校へ連絡し、「いじめとして対応してほしい」とはっきり伝えます。
「実は、学校でいじめられてる」。わが子からそう打ち明けられたとき、冷静でいられる親はいません。驚き、怒り、悲しみ、そして「どうして気づけなかったのか」という後悔。私は教師として、また教育委員会の指導主事として、そんな保護者の方々と数多く向き合ってきました。
だからこそ、お伝えしたいことがあります。打ち明けられてからの24時間の動き方で、その後の解決の早さが大きく変わります。この記事では、その24時間にすべきことを順番にまとめました。
最初の1時間:まず、受け止める
いじめられている子の多くは、なかなか「助けて」と言いません。親に心配をかけたくない、恥ずかしい、言ったらもっとひどくなるかもしれない。そうした迷いを乗り越えて、ようやく口にした一言です。最初の反応で、子どもは「話してよかった」とも「話さなければよかった」とも感じます。
| かけたい言葉 | 避けたい言葉 |
|---|---|
| 話してくれてありがとう | どうしてもっと早く言わなかったの |
| あなたは悪くない | あなたにも原因があるんじゃないの |
| お父さん(お母さん)が必ず守る | やり返せばいいのに/気にしすぎだよ |
| 学校にどう伝えるか、一緒に考えよう | 明日、相手の家に怒鳴り込んでくる |
「あなたは悪くない」は、何度でも伝えてください。いじめられている子の多くは、「自分にも原因がある」と思い込まされています。どんな理由があっても、いじめていい理由にはなりません。いじめは、いじめる側が100%悪いのです。
また、親が感情的になって相手の家に乗り込んだり、SNSで相手を名指ししたりするのは逆効果です。子どもは「親に言うと大ごとになる」と感じ、次から話してくれなくなります。怒りは当然の感情ですが、行動は学校を通して進めましょう。
その日の夜:話を聞いて、記録する
子どもが落ち着いたら、無理に問い詰めず、話せる範囲で聞いていきます。聞いた内容は、子どもの言葉のまま、日付を入れてメモに残してください。
- いつ、どこで(日付と時間帯、教室・登下校・ネット上など)
- だれから(名前がわかれば)
- 何をされたか、何を言われたか(できるだけ具体的に)
- いつごろから、どのくらい続いているか
- 見ていた人はいるか
- 今の気持ち、体の調子(眠れない、食欲がない、学校に行きたくないなど)
LINEやSNSでの悪口、壊された持ち物、けがの写真なども残しておきます。ネット上の書き込みは削除されることがあるので、日付と相手の名前がわかるようにスクリーンショットを撮ってください。この記録が、学校が事実を確かめるときの大きな手がかりになります。
けがをしている、お金を取られている、「死にたい」と口にしているなど、命や安全にかかわる場合は、翌朝を待たずに動いてください。けがは医療機関へ、暴力や恐喝は警察の少年相談窓口へ。子どもが強い不安を口にしているときは、24時間子供SOSダイヤル(0120-0-78310)に保護者から相談することもできます。
翌朝まで:学校に連絡する
連絡は、担任の先生でかまいません。担任に話しにくい場合は、教頭先生や生徒指導の先生、養護教諭でも大丈夫です。どの先生に伝えても、学校の「いじめ対策組織」に報告されることが国の方針で決まっています。
伝えるときは、次の3点をはっきり言葉にしてください。
- 「いじめとして対応してほしい」:子どもが心身の苦痛を感じていれば、法律上いじめにあたります。
- 「まず子どもの安全を守ってほしい」:明日からの登校時や休み時間に、どう見守ってもらえるかを確認します。
- 「事実確認の結果と今後の方針を教えてほしい」:いつごろ連絡をもらえるかも聞いておきます。
電話で伝えたあとは、できれば面談の時間をとってもらいましょう。国の方針では、学校は事実を確認したら、家庭訪問などでその日のうちに保護者へ伝えることが求められています。学校とのやりとりも、日時・相手・内容をメモしておくと安心です。
明日、学校に行かせるべき?
子どもが「行きたくない」と言うなら、無理に行かせなくて大丈夫です。学校は命をかけて行く場所ではありません。休ませることは、逃げではなく、子どもを守るための立派な選択です。
一方で、本人が「行きたい」と言うなら、その気持ちも尊重してください。その場合は、学校が見守りの体制をとれているかを確認したうえで送り出しましょう。どちらを選んでも、毎日「今日はどうだった?」と声をかけ、小さな変化に気づける状態をつくることが大切です。
最初の24時間チェックリスト
- 「話してくれてありがとう」「あなたは悪くない」と伝えた
- 子どもの話を、日付を入れてメモした
- スクリーンショットや写真などの証拠を保存した
- 命や安全にかかわる場合は、医療機関・警察・相談窓口に連絡した
- 学校に「いじめとして対応してほしい」と伝えた
- 明日の登校(または休むこと)について、子どもと話し合った
学校の対応に納得できないときの相談先や、学校と一緒に解決を進めるコツは、続く記事でくわしくお伝えします。困ったときの相談先は、相談窓口一覧にまとめています。
出典:いじめ防止対策推進法、文部科学大臣決定「いじめの防止等のための基本的な方針」(平成29年改定)、荒井隆一『いじめ2.0』第1・3節、第1・4節、第2・17節
