この記事の3行まとめ
- いじめ対応は、どんなに力のある先生でもひとりで抱えてはいけません。
- すべての学校に「学校いじめ対策組織」を置くことが、法律で義務づけられています。
- 発見から解消までを12のステップで決めておけば、だれが担当しても同じ質で動けます。
これまでの学校では、いじめ対応といえば担任がひとりで走り回るのがふつうでした。子どもから話を聞き、相手の家に電話をし、放課後に家庭訪問をする。学年の先生に相談するのは、事態がこじれてから。そんな学校も少なくありませんでした。
しかし、それはとても危うい対応です。どんなに力のあるスーパーティーチャーでも、ひとりの判断には必ず見落としが生まれます。「これはいじめではなく、からかいだ」「注意すれば収まるだろう」。そうした一人の判断が見逃しにつながります。複数の目で確かめ、さまざまな視点から対応を考えることが欠かせません。
法律が求める「学校いじめ対策組織」
いじめ防止対策推進法の第22条は、すべての学校に、いじめ対策のための常設の組織を置くよう定めています。国の基本方針はさらに、教職員がいじめを見つけたら「一人で抱え込まず、一人で判断せず、他の業務より優先して」この組織に報告しなければならないとしています。
報告せずに抱え込んでいたことがわかれば、処分の対象にもなりえます。つまり今は、担任ひとりで対応することそのものが、ルール違反なのです。
組織のメンバー例
| メンバー | 主な役割 |
|---|---|
| 校長・教頭(副校長) | 最終判断、教育委員会への報告、保護者対応の責任者 |
| 生徒指導主事(主任) | 組織のまとめ役。会議の招集と対応方針の案づくり |
| 学年主任・担任 | 子どもの様子の把握、聴き取り、日々の見守り |
| 養護教諭 | 保健室での様子の把握、心と体のケア |
| スクールカウンセラー | 被害・加害の子どもの心理面の支援 |
| スクールソーシャルワーカー | 家庭環境の課題への支援、関係機関とのつなぎ |
大切なのは、名簿をつくって終わりにしないことです。年度はじめの全校集会で「いじめのことは、この先生たちに相談してね」と子どもたちに顔を見せて紹介してください。子どもが「この学校には自分を守ってくれる先生がたくさんいる」と知っていることが、早期発見の一番の土台になります。
もうひとつ、報告の順番も決めておきます。「まず○○先生、不在なら○○先生、どちらもいなければ○○先生」と明確にしておけば、発見した先生が迷わずにすみます。
発見から解消までの12ステップ
拙著『いじめ2.0』で紹介した対応マニュアルを、国の基本方針に沿って整理した流れです。ある学級で午前中にいじめが見つかった場合を想定しています。各ステップのくわしい進め方は、このカテゴリの続く記事で解説します。
| ステップ | やること | 目安 |
|---|---|---|
| 1. いじめの発見 | 行為を止めて被害の子の安全を確保し、すぐに組織へ報告 | 発見直後 |
| 2. 第1回緊急対策会議 | 状況を確認し、聴き取りの分担と記録係を決める | 当日午前 |
| 3. 聴き取り | 被害・加害・見ていた子から、1人につき教師2人で聴く | 当日、下校まで |
| 4. 第2回緊急対策会議 | いじめかどうかを判断し、対応方針と保護者への伝え方を決める | 当日放課後 |
| 5. 被害の子の家庭訪問 | 事実と学校の方針を伝え、守り通すことを約束する | 当日中 |
| 6. 加害の子の家庭訪問 | 事実と重大さを伝え、家庭での指導と協力をお願いする | 当日中 |
| 7. 第3回緊急対策会議 | 保護者の要望を踏まえて方針を修正し、翌朝からの見守り体制を決める | 当日夜 |
| 8. 教育委員会へ報告 | いじめと判断したら報告する | 判断から24時間以内が目安 |
| 9. 指導 | 被害の子には安心と自信を、加害の子には反省と責任を | 翌日以降 |
| 10. 謝罪の場 | 学校で、保護者同席のもと、教師の進行で行う | 加害の子が心から謝れる状態になってから |
| 11. 再発防止の支援 | 被害の子の回復、加害の子のストレスへの支援、集団への指導 | 謝罪から3か月 |
| 12. 対策会議の定期開催 | 3か月後に「行為が止んでいる」「苦痛を感じていない」を面談で確認し、解消を判断 | 週1回〜月1回 |
この流れで一番大事なのは、スピードです。特に家庭訪問は、聴き取りをしたその日のうちに行ってください。日をまたぐと、被害の家庭は「学校は動いてくれない」と不信を募らせ、加害の家庭では事実を隠そうとする動きが出ることがあります。
会議の記録は、子どもと先生を守る
第1回の会議から記録係を決め、いつ、だれが、何を決めたかを残してください。記録は、全教職員で同じ方針で動くための資料になります。万一、重大事態に発展したときには、学校が何をしてきたかを示す大切な証拠にもなります。国のガイドラインでは、重大事態の調査にかかわる記録は、少なくとも5年間保存することが望ましいとされています。
今日からできるチェックリスト
- 自校の学校いじめ対策組織のメンバーを、全教職員が言える
- いじめを見つけたときの報告先の順番が決まっている
- 子どもたちに、組織の先生を顔つきで紹介している
- 聴き取りメモや報告カードなど、記録の様式がそろっている
- 授業があっても緊急対策会議を開けるよう、自習体制の組み方を決めている
いじめは、学校全体で向き合えば必ず解決に近づけます。次回からは、12のステップを一つずつくわしく見ていきます。
出典:いじめ防止対策推進法 第22条・第23条、文部科学大臣決定「いじめの防止等のための基本的な方針」(平成29年改定)、文部科学省「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」、荒井隆一『いじめ2.0』第2・16節、第2・17節
