いじめが起きたら:学校対応マニュアル

いじめはチームで対応する。「学校いじめ対策組織」の作り方と12のステップ

あらせん(荒井隆一)あらせん
この記事の目次
  1. 法律が求める「学校いじめ対策組織」
  2. 組織のメンバー例
  3. 発見から解消までの12ステップ
  4. 会議の記録は、子どもと先生を守る
  5. 今日からできるチェックリスト

この記事の3行まとめ

  • いじめ対応は、どんなに力のある先生でもひとりで抱えてはいけません。
  • すべての学校に「学校いじめ対策組織」を置くことが、法律で義務づけられています。
  • 発見から解消までを12のステップで決めておけば、だれが担当しても同じ質で動けます。

これまでの学校では、いじめ対応といえば担任がひとりで走り回るのがふつうでした。子どもから話を聞き、相手の家に電話をし、放課後に家庭訪問をする。学年の先生に相談するのは、事態がこじれてから。そんな学校も少なくありませんでした。

しかし、それはとても危うい対応です。どんなに力のあるスーパーティーチャーでも、ひとりの判断には必ず見落としが生まれます。「これはいじめではなく、からかいだ」「注意すれば収まるだろう」。そうした一人の判断が見逃しにつながります。複数の目で確かめ、さまざまな視点から対応を考えることが欠かせません。

法律が求める「学校いじめ対策組織」

いじめ防止対策推進法の第22条は、すべての学校に、いじめ対策のための常設の組織を置くよう定めています。国の基本方針はさらに、教職員がいじめを見つけたら「一人で抱え込まず、一人で判断せず、他の業務より優先して」この組織に報告しなければならないとしています。

報告せずに抱え込んでいたことがわかれば、処分の対象にもなりえます。つまり今は、担任ひとりで対応することそのものが、ルール違反なのです。

組織のメンバー例

メンバー主な役割
校長・教頭(副校長)最終判断、教育委員会への報告、保護者対応の責任者
生徒指導主事(主任)組織のまとめ役。会議の招集と対応方針の案づくり
学年主任・担任子どもの様子の把握、聴き取り、日々の見守り
養護教諭保健室での様子の把握、心と体のケア
スクールカウンセラー被害・加害の子どもの心理面の支援
スクールソーシャルワーカー家庭環境の課題への支援、関係機関とのつなぎ

大切なのは、名簿をつくって終わりにしないことです。年度はじめの全校集会で「いじめのことは、この先生たちに相談してね」と子どもたちに顔を見せて紹介してください。子どもが「この学校には自分を守ってくれる先生がたくさんいる」と知っていることが、早期発見の一番の土台になります。

もうひとつ、報告の順番も決めておきます。「まず○○先生、不在なら○○先生、どちらもいなければ○○先生」と明確にしておけば、発見した先生が迷わずにすみます。

発見から解消までの12ステップ

拙著『いじめ2.0』で紹介した対応マニュアルを、国の基本方針に沿って整理した流れです。ある学級で午前中にいじめが見つかった場合を想定しています。各ステップのくわしい進め方は、このカテゴリの続く記事で解説します。

ステップやること目安
1. いじめの発見行為を止めて被害の子の安全を確保し、すぐに組織へ報告発見直後
2. 第1回緊急対策会議状況を確認し、聴き取りの分担と記録係を決める当日午前
3. 聴き取り被害・加害・見ていた子から、1人につき教師2人で聴く当日、下校まで
4. 第2回緊急対策会議いじめかどうかを判断し、対応方針と保護者への伝え方を決める当日放課後
5. 被害の子の家庭訪問事実と学校の方針を伝え、守り通すことを約束する当日中
6. 加害の子の家庭訪問事実と重大さを伝え、家庭での指導と協力をお願いする当日中
7. 第3回緊急対策会議保護者の要望を踏まえて方針を修正し、翌朝からの見守り体制を決める当日夜
8. 教育委員会へ報告いじめと判断したら報告する判断から24時間以内が目安
9. 指導被害の子には安心と自信を、加害の子には反省と責任を翌日以降
10. 謝罪の場学校で、保護者同席のもと、教師の進行で行う加害の子が心から謝れる状態になってから
11. 再発防止の支援被害の子の回復、加害の子のストレスへの支援、集団への指導謝罪から3か月
12. 対策会議の定期開催3か月後に「行為が止んでいる」「苦痛を感じていない」を面談で確認し、解消を判断週1回〜月1回

この流れで一番大事なのは、スピードです。特に家庭訪問は、聴き取りをしたその日のうちに行ってください。日をまたぐと、被害の家庭は「学校は動いてくれない」と不信を募らせ、加害の家庭では事実を隠そうとする動きが出ることがあります。

会議の記録は、子どもと先生を守る

第1回の会議から記録係を決め、いつ、だれが、何を決めたかを残してください。記録は、全教職員で同じ方針で動くための資料になります。万一、重大事態に発展したときには、学校が何をしてきたかを示す大切な証拠にもなります。国のガイドラインでは、重大事態の調査にかかわる記録は、少なくとも5年間保存することが望ましいとされています。

今日からできるチェックリスト

  • 自校の学校いじめ対策組織のメンバーを、全教職員が言える
  • いじめを見つけたときの報告先の順番が決まっている
  • 子どもたちに、組織の先生を顔つきで紹介している
  • 聴き取りメモや報告カードなど、記録の様式がそろっている
  • 授業があっても緊急対策会議を開けるよう、自習体制の組み方を決めている

いじめは、学校全体で向き合えば必ず解決に近づけます。次回からは、12のステップを一つずつくわしく見ていきます。

出典:いじめ防止対策推進法 第22条・第23条、文部科学大臣決定「いじめの防止等のための基本的な方針」(平成29年改定)、文部科学省「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」、荒井隆一『いじめ2.0』第2・16節、第2・17節

あらせん(荒井隆一)
この記事を書いた人 あらせん(荒井隆一)

小学校校長。書家。ことわざの達人。SUNPEACE 理事長、情熱教師塾 塾長。第63回読売教育賞 最優秀賞。著書『いじめ2.0〜新しいいじめとの戦い方〜』。

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