この記事の3行まとめ
- いじめは、ガマンしても良いことがひとつもありません。
- 今の学校は、「助けて」の一言で動かなければならないと法律で決まっています。
- 今日できることは3つ。「だれか1人に話す」「メモを残す」「相談窓口を知っておく」です。
はじめに
こんにちは。元小学校教師の荒井隆一です。私は16年間教壇に立ち、その後は教育委員会で、いじめの問題に向き合ってきました。
この記事を開いたあなたは、いま、だれにも言えないつらさを抱えているのかもしれません。「親に心配をかけたくない」「いじめられているなんて恥ずかしい」。そう思って、ひとりで学校に通い続けているのかもしれません。
そう思えるのは、あなたがやさしくて、誇りを持っている人だからです。でも、これだけは信じてください。いじめは、ガマンしなくていいのです。
私には、教え子を守りきれなかったつらい経験があります。「もう二度と、だれも失いたくない」。その思いで、いまこの文章を書いています。
いじめをガマンしてはいけない理由
いじめは、「そのうち終わる」ものではありません。たいていは、だれかが止めるまで続きます。なぜなら、いじめをやめるかどうかを決めているのは、いじめている側だけだからです。
長く続くいじめは、心に深い傷を残します。眠れなくなる、体が動かなくなる、何年たっても思い出して苦しくなる。そんな状態(PTSDやうつ病など)につながることもあります。ガマンすればするほど、回復にも時間がかかるのです。
それに、あなたはひとりではありません。文部科学省の調査では、2024年度に全国の学校が見つけたいじめは約77万件。過去で一番多い数です。この数字は「いじめが増えた」だけでなく、「先生たちが小さないじめも見逃さずに拾うようになった」ことも表しています。
今は「助けて」で学校が動く時代
「先生に言っても、何も変わらないんじゃないか」。そう思うかもしれません。でも、昔と今では大きく違います。
2013年に「いじめ防止対策推進法」という法律ができました。この法律で、学校には次のことが義務づけられています。
- いじめの判断基準は「あなたがつらいかどうか」:相手が「遊びだった」と言っても、あなたが心や体につらさを感じていればいじめです。1回だけでもいじめです。
- 先生はひとりで抱えこんではいけない:どの学校にも「いじめ対策のチーム」があり、担任の先生はそこへ報告しなければなりません。
- あなたを守り通すのは学校の責任:国の方針には、いじめられた子を「徹底して守り通す」と書かれています。
つまり、「助けて」と言われたのに動かない学校は、法律違反になるのです。昔のように「これくらいで大げさな」と流すことは、もう許されていません。
データで見る:先生に言うと、どうなる?
いじめ研究の第一人者、森田洋司さんたちが1995年に行った調査では、先生にいじめを伝えた子の約8割が「先生はいじめをなくそうとしてくれた」と答えました。その結果、「なくなった」「少なくなった」が65.3%、「ひどくなった」は6.5%だけでした。しかもこれは、法律ができるずっと前の数字です。最初の一言さえ言えれば、大人たちは動き出すのです。
今日できる3つのこと
いきなり大きなことをしなくて大丈夫です。今日は、この3つのうちどれか1つだけでもやってみてください。
① だれか1人に「助けて」と言う
相手は、話しやすい人ならだれでもかまいません。担任の先生、保健室の先生、部活の先生、スクールカウンセラー、家族。学校の先生なら、だれに言っても「いじめ対策のチーム」に伝わる仕組みになっています。
口で言いにくいときは、こんな方法もあります。
- 手紙やメモを先生に渡す(「相談したいことがあります」の一行だけでもOK)
- 学校のタブレットの「心の健康観察」や相談フォームで、一番つらいマークを選ぶ
- 学校のいじめアンケートに、正直に書く
家族に心配をかけたくない気持ちは、よくわかります。でも、あなたがひとりで苦しんでいることこそ、家族がいちばん望んでいないことです。
② されたことをメモに残す
相談するとき、「いつ、どこで、だれに、何をされたか」がわかると、先生はすぐに動けます。ノートやスマホのメモに、簡単に書いておきましょう。
| 書くこと | 例 |
|---|---|
| いつ | 10月20日(月)昼休み |
| どこで | 教室の後ろ |
| だれから | Aさん、Bさん |
| 何をされたか | 筆箱を隠された。「きもい」と言われた |
| そのときの気持ち | 悲しくて、午後の授業が頭に入らなかった |
LINEやSNSでの悪口は、消す前にスクリーンショットを撮っておきましょう。日付と相手の名前が写るようにするのがコツです。見るのがつらいときは、無理に読み返さなくて大丈夫。保存だけして、信頼できる大人にそのまま見せてください。
記録をつけるのはつらい作業かもしれません。でもこれは、あなたの味方を増やすための、大切な武器です。
③ 相談窓口をひとつ知っておく
学校や家族に言いにくいときのために、学校の外にも相談先がたくさんあります。名前を言わなくても相談できる窓口がほとんどです。今すぐ電話しなくても、「ここにかければいい」と知っているだけで、心は少し軽くなります。次の表をスクショしておいてください。
今すぐ使える相談窓口
| 窓口 | 連絡先 | こんなときに |
|---|---|---|
| 24時間子供SOSダイヤル(文部科学省) | 0120-0-78310(なやみ言おう)。24時間・年中無休・無料 | 夜中でも今すぐ話したい |
| こどもの人権110番(法務省) | 0120-007-110。平日8時30分〜17時15分・無料 | 学校に言っても止まらない |
| 法務局LINEじんけん相談・メール相談(法務省) | 法務省「こどもの人権110番」のページから | 声を出さずに相談したい |
| 児童相談所虐待対応ダイヤル | 189(いちはやく)。24時間・年中無休・無料 | 家でもつらいことがある |
| SNS・チャットの相談 | 文部科学省「子供のSOSの相談窓口」から探せます | 地元の窓口や、ほかのチャット相談を探したい |
| 都道府県警察の少年相談窓口 | 各都道府県警察のホームページ | 殴られた、お金を取られた |
もし今、とてもつらくて「消えてしまいたい」と思うほどなら、この記事の続きを読むより先に、一番上の24時間子供SOSダイヤルに電話してください。うまく話せなくても大丈夫です。沈黙のままでも、相談員さんは待っていてくれます。
それでもつらいときに知っておいてほしいこと
学校は、命をかけて行くところではありません。相談してもいじめが止まらないときは、休んでいいんです。今は、学校の別室や地域の教育支援センター、フリースクール、オンラインなど、教室の外で学ぶ方法も増えています。具体的な「逃げ方」は、次回以降の記事でくわしく紹介します。
そして、あなたは悪くありません。「自分にも原因があるから」と思っているなら、それはいじめる側があなたに思い込ませたことです。暗いから、変わっているから、勉強ができるから。どんな理由があっても、人を傷つけていいことにはなりません。いじめは、いじめる方が100%悪いのです。
いじめを乗り越えて、今は大好きな仕事で活躍している大人は、あなたが思うよりずっとたくさんいます。人生を100年にたとえるなら、15歳はまだ夜明け前。太陽が昇るのはこれからです。
まずは今日、だれかにひとことだけ。「助けて」と伝えてみてください。
次に読む記事(公開後にリンクを入れてください)
- だれに「助けて」と言えばいい?相談先の選び方
- 相談の前に。いじめ記録ノートと証拠の残し方
- (保護者の方へ)「いじめられている」と打ち明けられたら、最初の24時間
出典:文部科学省「令和6年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」、森田洋司ほか『日本のいじめ』(金子書房)、荒井隆一『いじめ2.0』
