いじめ体験談③ 漫画家 蛭子能収さん
漫画家の蛭子能収さんをご存知でしょうか。33歳でデビューし、現在は俳優やタレントとしても活躍されています。
「中2の時、いじめを受けていました。不良たちに呼び出され、カバン持ちや後片付けをさせられていました。グループから抜け出せず、自分だけ嫌な役をやらされていました。抵抗したらけんかになって、俺は絶対に負けるっていう自信があったんですよ。情けないですけど。(中略)家に帰ると、漫画をひたすら描いていました。いじめた人を敵役にして倒す、というようなものを描いていましたね。(中略)一人でいることは勇気が必要です。でも無理して他人に合わせるのも本当につらい。ひとりでぼっちでもいいんですよ」
蛭子さんは不登校という選択をせず、最後までいじめに耐え続けました。昭和という時代、学校へ行かないという選択は許されなかったのかもしれません。
蛭子さんのすごいところは、いじめを受けている時期に、いじめた人を敵役にして倒すという漫画をひたすら描いていたことです。彼の著書「ひとりぼっちを笑うな(角川書店)」では、いじめられていた時期を振り返って、次のように述べられています。
「むしろ、『自分は好かれているんだな』と思っていましたからね。(中略)むしろ、『好かれているからこそ、かまわれているんだ。ほんとに参るなぁ。ハハハッ』くらいの発想でいたほうが、都合がいい・・・」
圧倒的な四面楚歌力には驚かされます。孤独感や不安がいっぱいの時にも、状況をポジティブに捉える。そしてやはり蛭子さんも、絵を描く作業に没頭しています。孤独の時期こそ、自分を飛躍させるチャンスに変えることができるのです。蛭子さんの、「ひとつぼっちでもいいんですよ」という言葉には、説得力があります。