この記事の3行まとめ
- 自己有用感とは、「人の役に立った」「感謝された」「認められた」ことから生まれる、自分への肯定的な評価です。
- 自尊感情が「自分で自分をどう見るか」なのに対し、自己有用感は「他者との関係の中で」生まれます。
- 教師が子どもをよく見て認め、活躍の場をつくり、子ども同士が認め合う場を設けることで高まります。

いじめが起こりにくい集団の条件
いじめは集団の中で起こります。では、いじめが起こりにくい集団にするには、どうすればよいのでしょうか。
国立教育政策研究所の研究から見えてきた答えの一つが、一人一人の「自己有用感」を高めることです。自己有用感が高い集団では、いじめが起こりにくいと考えられています。
自己有用感とは
国立教育政策研究所は、自己有用感を次のように説明しています。
人の役に立った、人から感謝された、人から認められた、という自分と他者(集団や社会)との関係を自他共に肯定的に受け入れられることで生まれる、自己に対する肯定的な評価
ポイントは、他者からの評価を感じたうえで生まれる、という点です。「学級でいちばん字がうまい」という自信ではなく、「英語が得意だから代表に選ばれた。みんなの期待に応えたい」という自信。学級でいちばんかどうかは、実は重要ではありません。
自尊感情との違い
| 自尊感情 | 自己有用感 | |
|---|---|---|
| 中心にあるもの | 自分による自己評価 | 他者からの評価を受けた自己評価 |
| 生まれる場面 | 一人でも生まれる | 人との関係の中で生まれる |
| 社会性とのつながり | 必ずしも結びつかない | 結びつきやすい |
どちらも自分を肯定的にとらえる点は同じです。ただ、他者の存在を前提としない自尊感情は、社会性に結びつくとは限りません。
アメリカのカリフォルニア州では1980年代後半、子どもの自尊感情を高めれば問題行動が減るのではないかと考え、大規模な研究が行われました。しかし、問題行動と自尊感情の間には、はっきりした関係が見られなかったと報告されています。
大切なのは、自己有用感に裏づけられた自尊感情を育てることです。
いじめが起こりにくい集団ができるまで
- 日々の教育活動に「自己有用感」を育む視点を入れる
- 社会性が育ち、他者を攻撃する可能性が低くなる
- いじめが起こりにくい集団ができる
3つの要素:存在感・承認・貢献
栃木県教育委員会の研究では、自己有用感を次の3つの要素でとらえています。
| 要素 | 子どもの実感 |
|---|---|
| 存在感 | 自分は、みんなの中で価値ある存在だ |
| 貢献 | 自分は、みんなの役に立つ行動をしている |
| 承認 | 自分の行動や存在は、みんなから認められている |
その土台には、安心感と信頼関係が必要です。
学級で高める4つの手立て
- 教師が子どもをよく見て、その子に応じて認める
- 教師が子どもの話をじっくり聴き、子どもに話しかける
- 子どもに活躍の場を与え、見守り、やり遂げさせ、達成感を味わわせる
- 子ども同士が認め合う場を設け、人間関係づくりを支える
特別なことではありません。毎日の授業、係活動、行事の中に、この4つの視点を入れていくことが大切です。
1つ目の「認める」ことには、ちょっとしたコツがあります。くわしくは「褒める」と「認める」は違うで紹介します。私の学級で実際に自己有用感が育った例は、大縄跳びの奇跡とPEACE FORUMの奇跡で紹介しています。
出典:荒井隆一『いじめ2.0』第2・18節、国立教育政策研究所「生徒指導リーフ『自尊感情』?それとも、『自己有用感』?」
