この記事の3行まとめ
- 学級崩壊を経験した学年を受け持った教師3人は、「自己有用感に裏づけられた自尊感情」を育てることを目標にしました。
- 修学旅行の計画から、平和を伝えるイベント「PEACE FORUM」の開催まで、子どもたちに任せました。
- 「自分には良いところがある」と答えた子は51%から68%に増え、いじめや問題行動も起こらなくなりました。
「そんなん無理や」の学年
私が6年生を担任したときのことです。この学年は3年生のころ、学級崩壊を起こしていました。教師への暴言、授業妨害、いじめや窃盗。教師が働きかけても「そんなん無理や」「やるだけ無駄やし」と否定的な言葉ばかり。学校の自尊感情のアンケートで「自分には良いところがある」と答える割合は、どの学年よりも低い状態でした。
教師3人で決めたこと
担任の教師3人は、「自己有用感に裏づけられた自尊感情を高めて、卒業させよう」と目標を決めました。そのために決めたのが、次の7つです。
- やればできるという自信を持たせる
- 子どもを信じ抜く
- 話し合いを大事にする
- 子どもが真剣に考えたことは、やらせてみる
- 最後までやり遂げさせる
- 成功を確認して褒める
- みんなで認め合う
あわせて、学年通信や学級通信をこまめに出し、子どもの成長を保護者にていねいに伝えることにしました。
修学旅行の計画を任せる
総合的な学習の集大成は、広島への修学旅行です。テーマ「広島の魅力を味わおう」だけを教師が決め、あとの計画はすべて子どもたちに任せました。
最初は「ほんまかいな」という表情でした。でも教師が本気だとわかると、子どもたちは広島の魅力を調べ、ランキングで行き先を絞り込み、ほぼすべての行程を自分たちで決めました。
広島では、被爆体験を聞く会がありました。語り部さんは、腕のやけどのあとを見せながら「絶対に戦争はしないでね」と訴えられました。
「伝えたい」から生まれたイベント
帰ってきてから、「何が一番心に残ったか」「何を伝えたいか」をアンケートで聞きました。ほとんどの子が「一番伝えたいのは被爆の体験」と答えました。
話し合いの結果、子どもたちは戦争の残酷さと平和の尊さを伝えるイベント「PEACE FORUM」を開くことに決めました。劇、紙芝居、ポスター、歌、平和宣言。全員がどこかのグループに入りました。
子どもたちはチラシを2000枚作り、校区の家を回り、地域の番組にも出演して参加を呼びかけました。ある日の放課後、駅前で「お願いします。来てください」とチラシを配る子どもたちの姿を見つけました。教師は指示していません。私は感動で、その場から動けませんでした。
当日、そして広がり
当日は地域の方約100名が来場しました。アンケートには「平和の大切さを改めて考えさせられました」といった感想がつづられていました。

その後、地域の方の働きかけで第2回が開かれ、商業施設のホールでの開催と展示会に発展しました。様子は3つの新聞に掲載され、展示はのべ1万人以上の地域の方に見てもらうことができました。
「荒井先生! 僕らでも、やればできるんやなあ」。子どもたちの笑顔は、はちきれていました。
数字で見る変化
| 取り組み前 | 取り組み後 | |
|---|---|---|
| 「自分には良いところがある」と答えた子 | 51% | 68% |
| いじめや問題行動 | 学年全体に広がっていた | 取り組みが活発になったころから起こらなくなった |
この実践から伝えたいこと
この取り組みには、自己有用感の3つの要素がすべて含まれていました。一人一人がグループで役割を持ち(存在感)、地域の人に平和を伝え(貢献)、地域の人から認められた(承認)のです(いじめ予防のカギは「自己有用感」)。
教師が子どもを信じ抜き、任せて、励ます。それを繰り返すことで、子どもはこちらがびっくりするほどの力を発揮します。そのことを教えてくれた100名の子どもたちに、心から感謝しています。
出典:荒井隆一『いじめ2.0』第2・20節
