いじめが起きない学級づくり

実践記録「PEACE FORUMの奇跡」。学級崩壊を経験した6年生が地域を動かした

あらせん(荒井隆一)あらせん (更新 2026年10月30日)
この記事の目次
  1. 「そんなん無理や」の学年
  2. 教師3人で決めたこと
  3. 修学旅行の計画を任せる
  4. 「伝えたい」から生まれたイベント
  5. 当日、そして広がり
  6. 数字で見る変化
  7. この実践から伝えたいこと

この記事の3行まとめ

  • 学級崩壊を経験した学年を受け持った教師3人は、「自己有用感に裏づけられた自尊感情」を育てることを目標にしました。
  • 修学旅行の計画から、平和を伝えるイベント「PEACE FORUM」の開催まで、子どもたちに任せました。
  • 「自分には良いところがある」と答えた子は51%から68%に増え、いじめや問題行動も起こらなくなりました。

「そんなん無理や」の学年

私が6年生を担任したときのことです。この学年は3年生のころ、学級崩壊を起こしていました。教師への暴言、授業妨害、いじめや窃盗。教師が働きかけても「そんなん無理や」「やるだけ無駄やし」と否定的な言葉ばかり。学校の自尊感情のアンケートで「自分には良いところがある」と答える割合は、どの学年よりも低い状態でした。

教師3人で決めたこと

担任の教師3人は、「自己有用感に裏づけられた自尊感情を高めて、卒業させよう」と目標を決めました。そのために決めたのが、次の7つです。

  1. やればできるという自信を持たせる
  2. 子どもを信じ抜く
  3. 話し合いを大事にする
  4. 子どもが真剣に考えたことは、やらせてみる
  5. 最後までやり遂げさせる
  6. 成功を確認して褒める
  7. みんなで認め合う

あわせて、学年通信や学級通信をこまめに出し、子どもの成長を保護者にていねいに伝えることにしました。

修学旅行の計画を任せる

総合的な学習の集大成は、広島への修学旅行です。テーマ「広島の魅力を味わおう」だけを教師が決め、あとの計画はすべて子どもたちに任せました。

最初は「ほんまかいな」という表情でした。でも教師が本気だとわかると、子どもたちは広島の魅力を調べ、ランキングで行き先を絞り込み、ほぼすべての行程を自分たちで決めました。

広島では、被爆体験を聞く会がありました。語り部さんは、腕のやけどのあとを見せながら「絶対に戦争はしないでね」と訴えられました。

「伝えたい」から生まれたイベント

帰ってきてから、「何が一番心に残ったか」「何を伝えたいか」をアンケートで聞きました。ほとんどの子が「一番伝えたいのは被爆の体験」と答えました。

話し合いの結果、子どもたちは戦争の残酷さと平和の尊さを伝えるイベント「PEACE FORUM」を開くことに決めました。劇、紙芝居、ポスター、歌、平和宣言。全員がどこかのグループに入りました。

子どもたちはチラシを2000枚作り、校区の家を回り、地域の番組にも出演して参加を呼びかけました。ある日の放課後、駅前で「お願いします。来てください」とチラシを配る子どもたちの姿を見つけました。教師は指示していません。私は感動で、その場から動けませんでした。

当日、そして広がり

当日は地域の方約100名が来場しました。アンケートには「平和の大切さを改めて考えさせられました」といった感想がつづられていました。

PEACE FORUM の発表(イラスト)
子どもたちが、地域の人に平和への思いを伝える。(イラスト:広野りお)

その後、地域の方の働きかけで第2回が開かれ、商業施設のホールでの開催と展示会に発展しました。様子は3つの新聞に掲載され、展示はのべ1万人以上の地域の方に見てもらうことができました。

「荒井先生! 僕らでも、やればできるんやなあ」。子どもたちの笑顔は、はちきれていました。

数字で見る変化

取り組み前取り組み後
「自分には良いところがある」と答えた子51%68%
いじめや問題行動学年全体に広がっていた取り組みが活発になったころから起こらなくなった

この実践から伝えたいこと

この取り組みには、自己有用感の3つの要素がすべて含まれていました。一人一人がグループで役割を持ち(存在感)、地域の人に平和を伝え(貢献)、地域の人から認められた(承認)のです(いじめ予防のカギは「自己有用感」)。

教師が子どもを信じ抜き、任せて、励ます。それを繰り返すことで、子どもはこちらがびっくりするほどの力を発揮します。そのことを教えてくれた100名の子どもたちに、心から感謝しています。

出典:荒井隆一『いじめ2.0』第2・20節

あらせん(荒井隆一)
この記事を書いた人 あらせん(荒井隆一)

小学校校長。書家。ことわざの達人。SUNPEACE 理事長、情熱教師塾 塾長。第63回読売教育賞 最優秀賞。著書『いじめ2.0〜新しいいじめとの戦い方〜』。

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