この記事の3行まとめ
- いじめとけんかの違いは、当事者の間に「力関係の差」があるかどうかです。
- ただし国の基本方針は、けんかに見えても背景を調べ、被害の子の受け止めで判断するよう求めています。
- 迷ったら、ひとりで判断せず学校いじめ対策組織に報告します。
先生方、「いじめとけんかの違いは何ですか」と子どもや保護者に聞かれたら、すぐに答えられるでしょうか。
いじめの基礎基本を知っているかどうかで、教え子を守れるかどうかが決まります。このシリーズでは、拙著『いじめ2.0』で示した「いじめの基礎基本14項目」を、最新の情報を加えながら一つずつ解説していきます。

違いは「力関係の差」
いじめとけんかは、どちらも子どもの間でトラブルが起きている状態です。違いは、当事者の間に力関係の差があるかどうかです。ここでいう「力」とは、相手に与える影響力のことです。
| けんか | いじめ | |
|---|---|---|
| 人数・立場 | 同じくらい | 差がある(1対多数、人気や立場の差) |
| やる側・やられる側 | すぐに入れかわる | いつも決まっている |
| 傷つくのは | 両方 | された側だけ |
| 感情 | 長くは続かない | 苦しさが長く続く |
| やめるかどうか | 両方が決められる | した側だけが決められる |
参考:武田さち子『子どもとまなぶ いじめ・暴力克服プログラム』(合同出版)をもとに作成
「けんか」で終わらせない
とはいえ、力関係の差は外から見えにくいものです。国の基本方針は、けんかやふざけ合いであっても、見えない所で被害が起きていることがあるので、背景にある事情を調べ、子どもの感じる被害性に着目していじめかどうかを判断するよう求めています。
けんかに見えたが、よく調べたらいじめだった。そうしたケースは少なくありません。けんかを見つけたときも、組織で聴き取りを行い、背景を確かめることが大切です。
判断に迷う5つの事例クイズ
次のケースは、いじめとして扱うべきでしょうか。
| 事例 | 答え | 考え方 |
|---|---|---|
| 1. 口げんかで言い返したが、その夜眠れなかった | いじめとして扱う | やり返していても、心身の苦痛があればいじめにあたります |
| 2. いつも同じ子が「ツッコミ役」でたたかれ、笑いをとっている | いじめとして扱う | 「いじり」に見えても、役割が固定しているなら力の差があります |
| 3. 1対1の取っ組み合い。翌日には一緒に遊んでいる | けんかの可能性。ただし聴き取りは行う | 背景に別のいじめが隠れていないか確かめます |
| 4. グループで遊ぶとき、ある子だけがいつも鬼役 | いじめとして扱う | 本人が笑っていても、拒めない関係なら苦痛を感じていることがあります |
| 5. 好意で何度も話しかけ、相手がいやがっている | いじめとして扱う | 悪意がなくても、相手が苦痛を感じていれば対象になります |
5の場合、「いじめ」という言葉を使わず指導する柔軟な対応も認められています。ただし、学校いじめ対策組織への報告と情報共有は必ず行います。
迷ったら、ひとりで判断しない
いじめかどうかの判断は、担任ひとりでするものではありません。迷ったときこそ、学校いじめ対策組織に報告し、複数の目で判断してください。定義のくわしい解説は、いじめの定義は「4つの要素」で覚えるで紹介しています。
出典:荒井隆一『いじめ2.0』第2・1節、第2・2節、文部科学大臣決定「いじめの防止等のための基本的な方針」(平成29年改定)
