この記事の3行まとめ
- 加害の子の多くは、家庭や学級での不満やストレスを、弱い立場の子に向けて発散しています。
- 子どもは「いじめは悪い」とわかっています。それでも「面白い」という気持ちが勝ってしまうのです。
- だから指導は「叱る」だけでなく、「外からの抑止」と「ストレスへの手当て」の両方が必要です。
加害の子に共通するもの
いじめ研究者の滝充さんは、加害の子どもたちについて、家庭や学級などの環境に適応できずに不満とストレスをため、それを被害の子に向けて発散している、と指摘しています。
拙著で紹介した2017年の調査報告でも、約6割の子どもが学校や家庭でストレスを感じていました。ストレスの発散方法として趣味の時間をもつ子が多い一方で、誰かをたたく、意地悪をする、物を隠すと答えた子や、自分の髪を抜くなど自分を傷つける形で発散している子も少なくありませんでした。
「悪い」とわかっていても止まらない
森田洋司さんらが1984年に行った調査では、「持ち物隠し」を悪いと思う子は97%、「友だちをからかう」を悪いと思う子は91%でした。子どもたちは、いじめが悪いことだとわかっていたのです。
ところが実際には、持ち物隠しは調査した44学級のうち42学級で、からかいは全学級で起きていました。さらに、持ち物隠しを「面白い」と答えた子が約2割、からかいを「面白い」と答えた子が約4割いました。
| 行為 | 「悪い」と思う | 「面白い」と思う | 発生した学級 |
|---|---|---|---|
| 持ち物隠し | 97% | 約2割 | 44学級中42学級 |
| 友だちをからかう | 91% | 約4割 | 全学級 |
「いじめてはいけない」という理性よりも、「面白い」という感情が勝ってしまう。だから、子どもの内面だけに頼っていては、いじめは止まりません。
指導の2本柱
1. 外からの抑止
内面の抑止が働かないなら、外からの抑止が必要です。友だちの仲裁、教師の指導、そして学校がいじめを決してあいまいに終わらせない姿勢です。「二度としてはいけない」と心から思える指導を、組織で行ってください。
2. ストレスへの手当て
一方で、叱るだけでは、ストレスのはけ口が別の子に移るだけかもしれません。
- 加害の子の話をじっくり聴き、家庭や学級で抱えている不満を把握する
- スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーにつなぐ
- 学級全体でストレスマネジメントを学ぶ(深呼吸、リラクセーション、気持ちを言葉にする練習、運動など)
学級全体でストレスへの対処法を学んでおくことは、いじめの予防そのものになります。
加害の子も、支えが必要な子ども
いじめは決して許されません。けれども、加害の子もまた、支えを必要としている子どもです。行為には厳しく、子どもの背景にはあたたかく。この両方の視点が、再発を防ぎます。保護者向けにはわが子が「いじめの加害者」と言われたらで、家庭での向き合い方を紹介しています。
出典:荒井隆一『いじめ2.0』第2・7節、第2・8節
