地域と大人にできること

AIとテクノロジーで変わるいじめ予防。可能性と、気をつけたいこと

あらせん(荒井隆一)あらせん (更新 2026年10月30日)
この記事の目次
  1. 広がっているテクノロジーの活用
  2. 「信用スコア」という考え方
  3. 賛成と反対
  4. 私の考え

この記事の3行まとめ

  • 1人1台端末を使った心の健康観察や、SNSでの相談窓口など、テクノロジーを使ったいじめ予防が広がっています。
  • 相手を攻撃すると損をする「信用スコア」のような仕組みには、抑止力への期待と、監視社会への懸念の両方があります。
  • テクノロジーは、子どもの小さなSOSに大人が早く気づくための道具です。最後に動くのは人です。

広がっているテクノロジーの活用

取り組み内容
1人1台端末での心の健康観察子どもが毎日、端末で気分や体調を入力し、先生が変化に早く気づく。国のCOCOLOプランでも推進されている
SNSでの相談LINEなどで、電話が苦手な子どもも相談しやすくする。文部科学省の「SOS相談窓口」の案内にも、SNS相談が含まれている
ネット上のいじめへの対応情報流通プラットフォーム対処法(2025年4月施行)により、SNS事業者に削除対応の迅速化などが求められるようになった
データの活用アンケートや相談の記録を分析し、深刻化しそうなケースに早く気づこうとする試み

いずれも、目的は同じです。子どもの小さなSOSに、大人が早く気づくことです。

「信用スコア」という考え方

『いじめ2.0』では、中国のIT企業が提供する「信用スコア」のような仕組みを紹介し、「相手を攻撃すると、自分が損をする」社会になれば、いじめは減るのではないかと書きました。

今の社会は、「誰も見ていないところで、うまく相手を攻撃した者が得をする」仕組みになっている面があります。それを逆にしたい、という問題意識です。

賛成と反対

期待される点懸念される点
信用スコアのような仕組み人を攻撃すれば評価が下がるため、抑止力になる誰が、どんな基準で人を評価するのか。監視社会につながる
AIによる予測大人が見落としがちな変化に気づける予測が外れることがある。「危ない子」というレッテル貼りにつながる
心の健康観察毎日の小さな変化に気づける入力が形だけになる。見たあとに誰が動くかが決まっていないと意味がない

私の考え

『いじめ2.0』を書いたとき、私は、テクノロジーが社会を最適化し、いじめが起きにくい世界になる未来を夢見ていると書きました。その問題意識は、本に書いたとおりです。

一方で、人を点数で評価する仕組みには、慎重な議論が必要だという指摘も重く受け止めるべきです。テクノロジーを学校で使うなら、次のことが大切だと考えます。

  • 目的は「早く気づき、守ること」であり、子どもを評価したり罰したりすることではない
  • データを見たあと、誰がどう動くかを決めておく
  • 子どもと保護者に、何のためにどんなデータを使うかを説明する

テクノロジーは、大人の目を増やす道具です。でも、子どもの話を聴き、守り抜くのは人です。最後に動くのは、先生、保護者、地域の大人です(いじめはチームで対応する)。

出典:荒井隆一『いじめ2.0』第3・8節、文部科学省「誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策(COCOLOプラン)」(2023年3月)、特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律(情報流通プラットフォーム対処法)

あらせん(荒井隆一)
この記事を書いた人 あらせん(荒井隆一)

小学校校長。書家。ことわざの達人。SUNPEACE 理事長、情熱教師塾 塾長。第63回読売教育賞 最優秀賞。著書『いじめ2.0〜新しいいじめとの戦い方〜』。

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