この記事の3行まとめ
- スクールロイヤーは、学校や教育委員会の相談に乗る、教育行政に詳しい弁護士です。
- 早い段階から間に入ることで、学校は「対応すべきこと」と「対応しなくてよいこと」の線引きができ、保護者は感情ではなく事実と法律にもとづいた説明を受けられます。
- 都道府県や政令市ではほぼ配置が進んだ一方、市町村の教育委員会では2割に届いていません。
学校も保護者も、疲れ果てている
いじめをめぐる話し合いがこじれると、学校と保護者の関係は、あっという間に「対立」に変わります。

学校の側では、長時間の電話や面談が何日も続き、校長や担任が本来の仕事に手をつけられなくなります。いじめの重大事態のように法律にもとづく対応が必要な場面でも、教職員だけで説明や聞き取りをしなければならず、心身ともに疲れ切ってしまうことがあります。その間、ほかの子どもたちへの目配りや授業の準備が後回しになります。
保護者の側も苦しんでいます。わが子を守りたい一心で学校に訴えても、説明が二転三転したり、何を求めてよいのかわからなかったりして、不信感だけが積み重なっていきます。
どちらも、子どものためを思っているのです。それなのに、間に入って交通整理をしてくれる人がいない。ここに大きな問題があります。
スクールロイヤーとは
スクールロイヤーは、学校や教育委員会からの相談に乗り、法律の立場から助言する弁護士です。国は2020年度から、都道府県と政令市の教育委員会が弁護士に法務相談をする経費について、地方財政措置を講じています。
| 主な役割 | 内容 |
|---|---|
| 助言 | 学校や教育委員会からの相談に、法律の立場から答える |
| 予防 | トラブルが大きくなる前の段階から関わり、対応方針を一緒に整理する |
| 研修 | 教職員に、いじめ防止対策推進法や保護者対応の法的な考え方を伝える |
| 同席・対応 | 必要に応じて、保護者との面談に同席したり、調査に加わったりする |
学校にとってのメリット
| メリット | 内容 |
|---|---|
| 線引きができる | 「学校として対応すべきこと」と「法的に対応の義務がないこと」を専門家が整理してくれる |
| 初動を誤らない | 最初の対応や説明の仕方を相談でき、こじれる前に方針を決められる |
| 一人で抱えない | 校長や担任が一人で矢面に立たず、組織として対応できる |
| 子どもの時間を守る | 対応に追われる時間が減り、授業やほかの子どもたちへの目配りに戻れる |
保護者にとってのメリット
スクールロイヤーは、保護者と戦うための存在ではありません。保護者にとっても、次のようなメリットがあります。
| メリット | 内容 |
|---|---|
| 説明がぶれない | 法律と事実にもとづいた、筋の通った説明を受けられる |
| 何を求められるかがわかる | 学校に求めてよいこと、法律で定められた手続き(重大事態の調査など)がはっきりする |
| 感情のぶつけ合いにならない | 第三者が入ることで、話し合いが落ち着き、子どものための話に戻りやすい |
| 解決が早まる | 長引く対立が減り、子どもが安心して過ごせる環境づくりに早く進める |
いじめの重大事態の調査で弁護士などの第三者が加わることは、国のガイドラインでも想定されています。客観的で中立的な視点が入ることが、当事者の納得につながるからです(いじめの重大事態になったら)。
「こじれる前に」がいちばん大切
スクールロイヤーが本当に力を発揮するのは、裁判になってからではありません。トラブルの芽が出た初動の段階です。

- 保護者からの最初の訴えに、どう答えるか
- いじめの聴き取りの結果を、どこまで、どう伝えるか
- 要求のうち、応えるべきものと、応えられないものをどう説明するか
この段階で法律の専門家に気軽に相談できれば、多くのトラブルは大きくならずに済みます。
また、教育委員会が「スクールロイヤーと連携して対応しています」と保護者や地域に知らせることも大切です。組織として筋の通った対応をする姿勢が伝わり、行き過ぎた要求を未然に防ぐことにもつながります。
国の最新調査で見る配置の状況
文部科学省の調査(2024年度間、2026年3月公表)によると、主に教育行政に関わる弁護士(スクールロイヤー)がいる教育委員会の割合は、次のとおりです。
| 教育委員会 | スクールロイヤーがいる割合 |
|---|---|
| 都道府県 | 91.5%(47のうち43) |
| 政令指定都市 | 100%(20) |
| 中核市 | 74.2%(62のうち46) |
| 市町村など | 18.3%(1,718のうち314) |
都道府県や大きな市では配置が進みました。しかし、子どもや保護者にいちばん近い市町村の教育委員会では、まだ2割に届いていません。保護者との面談に同席したり、交渉を担ったりできる体制がある教育委員会は、さらに少ないのが現状です。
すべての市町に、気軽に相談できるスクールロイヤーを
私は、すべての市町の教育委員会に、学校が初動の段階から直接、すぐに相談できるスクールロイヤーを置くべきだと考えています。
- 申請手続きに時間がかかる相談窓口ではなく、学校が電話一本で相談できること
- 重大事態の調査や、学校だけでは解決が難しい事案では、面談や調査にも加われること
- 配置していることを、保護者や地域に知らせること
スクールロイヤーは、保護者と対立するための仕組みではありません。教職員が安心して子どもに向き合い、保護者が納得できる説明を受け、子どもが安心して学校で過ごせる。そのための、学校と家庭の両方を守るインフラです。
地域の方や保護者のみなさんも、市町の教育委員会や議会に「スクールロイヤーはいますか」と尋ねてみてください。その一言が、学校と子どもを守る仕組みづくりの後押しになります。
出典:文部科学省「教育行政に係る法務相談体制の整備等に関する調査(令和6年度間)」(2026年3月)、文部科学省「教育行政に係る法務相談体制について」(教育委員会月報 2022年5月号)、文部科学省「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」(令和6年8月改訂)
