小学校の校長として、毎日子どもたちの前に立っています。ことわざの達人として、ブログに350以上のことわざを書いてきました。その中から、「これだけは子どもに読ませたい」と思う50個を選びました。
上位10個には、私が実際に出会った子どもたちと、私自身の話を書きました。親子で、教室で、読んでみてください。
子どもに読ませたいことわざ ランキング第1位〜第10位
第1位 十人十色(じゅうにんといろ)
意味:人は一人一人姿かたちが違うように、好みや考え方もそれぞれ異なるということ。
「先生、私の机の上が真っ白です……」
担任をしていた2学期のある朝、ひとりの女の子が、泣きながら職員室に来ました。教室へ走ると、机一面に白いチョークの粉がまかれていました。いじめの理由は、服装や話し方が少し変わっていたから。それだけでした。
次の日、私は教室で訴えました。「人と違うって悪いこと? 顔、声、好きなもの、みんな違うやろ」。気がつくと、泣いていました。
子どもたちは自分たちで話し合い、「大縄跳びで千回」という目標を決めました。本番の日、記録は200回、300回。それでも「先生、どうしても千回跳びたいです」と立ち上がった子がいました。1週間後の再挑戦で、記録は1817回。泣きながら跳ぶ子がたくさんいて、私も泣いていました。
その後、いじめは止まりました。3学期の終わり、あの子から手紙が届きました。「私は先生の学級になれてよかった」。人はみんな違う。この四文字を、私はあの教室から教わりました。
この話をくわしく読む:実践記録「大縄跳びの奇跡」
「十人十色」の由来と使い方を読む
第2位 情けは人のためならず(なさけはひとのためならず)
意味:人に親切にしておけば、めぐりめぐって、いつか自分のためにもなる。だから人には親切にしたほうがよいということ。
23歳のとき、私は北海道の教員採用試験を受けました。母子家庭で、造園会社で働きながら通信大学で学ぶ毎日。お金はぎりぎりでした。
そんな私に、親友の中村さんは言いました。「北海道までの交通費は心配しなくてもいいよ。全部俺が出してやるから」。試験の2日間、中村さんは片道およそ2時間かけて、車で会場の町まで駆けつけてくれました。持ってきたビデオには、同僚の方や教え子たち、校長先生までが映っていて、「みんな待っていますよ!」と私に声をかけていました。
試験が終わった帰り道、車を停めて、ふたりで夜空を見上げました。空から星がこぼれそうでした。
結果は、不合格でした。そのあと兵庫県で合格し、教育者としての道が始まりました。あの星空を思い出すと、今でも泣きそうになります。人から受けた情けは、消えません。次の人へ渡していくものだと思っています。
この話をくわしく読む:忘れられない星空
「情けは人のためならず」の由来と使い方を読む
第3位 千里の道も一歩から(せんりのみちもいっぽから)
意味:どんな大事業でも、はじめはごく手近なところから始まるというたとえ。
私の英語は、中学1年生レベルです。それでも、すべて英語で話すセミナーコンテストのシンガポール大会に挑みました。
大会の1週間前、練習を見てもらうと、結果はボロボロ。ため息まじりに言われたのが、「あと100回やな」のひと言でした。
1週間で100回。むちゃくちゃです。平日は仕事があり、家では子育てもあります。帰ってからの時間に話しては、紙に正の字を1本ずつ書きました。空港でも、ホテルでも続けました。大会の日は一番乗りで会場に入り、本番で立つその場所で、最後の3回。これで100回です。
結果は、優勝でした。千里の道も、正の字の1本から。大きな夢の前で立ちすくむ子に、この話を贈りたいと思います。
この話をくわしく読む:「あと100回やな」の一言から優勝まで
「千里の道も一歩から」の由来と使い方を読む
第4位 石の上にも三年(いしのうえにもさんねん)
意味:つらいことでも、しんぼう強く努力すれば、必ずむくわれるということ。
担任した教え子に、スピードスケートのショートトラックに打ちこむ子がいました。
学校から帰るとすぐにバスに乗り、1時間以上かけて練習場へ。そして約3時間、毎日すべります。成績が伸びない時期もありました。
それでもやめなかったその子は、世界ジュニア大会で銀メダルをとりました。
才能という言葉で、片づけてはいけません。あの銀メダルの中には、毎日のバスの時間も、伸びなかった日々もつまっています。すぐに結果が出なくて苦しいとき、この言葉は「今やめないで」と背中を支えてくれます。
この話をくわしく読む:「一万時間の法則」で専門家を目指せ!
「石の上にも三年」の由来と使い方を読む
第5位 失敗は成功のもと(しっぱいはせいこうのもと)
意味:失敗しても、その原因をつきとめて反省すれば、次は成功するということ。
2025年12月の全校集会で、私は全校の子どもたちの前で、自分の失敗を話しました。約束の時間を間違えて覚えていて、相手に迷惑をかけてしまったことです。
大人が失敗を隠さずに話すと、子どもも安心して失敗を語れます。この日は、6年生が作った「失敗から立ち直った経験」のインタビュー動画も見ました。リレーのバトンパスの失敗。友だちにきつい言葉を言ってしまった失敗。6年生は、悔しさも後悔も、自分の言葉で語ってくれました。
失敗は「できない人」の証拠ではありません。「挑戦した人」の証拠です。最後は全校で、胸を張って声をそろえました。「失敗こそ、成長のチャンス!」
この話をくわしく読む:【全校集会】失敗こそ、成長のチャンス
「失敗は成功のもと」の由来と使い方を読む
第6位 青は藍より出でて藍より青し(あおはあいよりいでてあいよりあおし)
意味:弟子が師匠よりも優れた人になるたとえ。青色の染料は藍という草の葉から採るものだが、もとの藍よりも青くなることから。「出藍の誉れ」ともいう。
2012年、私は6年生の担任でした。広島への修学旅行で戦争の悲惨さを学んだ100名の子どもたちは、「地域の人に伝えたい」と動き出しました。
そうして生まれたのが、子どもたちが開いた地域のイベント「PEACE FORUM」です。そこには、子どもから大人へのまっすぐなメッセージがこめられていました。「戦争を今すぐやめてください」。
この実践は、第63回読売教育賞で最優秀賞をいただきました。でも、賞よりも心に残っているのは、大人の私たちが、子どもに教えられたことです。子どもたちは可能性のかたまりです。教えた人をこえていく姿を見られることが、教師のいちばんの幸せです。
この話をくわしく読む:子ども100名が平和イベントを開催!
「青は藍より出でて藍より青し」の由来と使い方を読む
第7位 虎穴に入らずんば虎子を得ず(こけつにいらずんばこじをえず)
意味:なにごとも危険を冒さなければ成功を収めることはできないというたとえ。
教え子のひとりが、少しのお金だけを握りしめて、ひとりでオーストラリアへ渡りました。新しい自分を探すためでした。
その子に、私はメッセージを送りました。「ファーストペンギン!頑張れ!」。ペンギンの群れで最初に海へ飛びこむ一羽のことです。海には天敵がいます。それでも、その一羽がいるから、みんなが続けます。
その子からは、こんな言葉も届きました。「帰国したらまた会ってください」。
こわいから、行かない。そのほうが安全です。でも、飛びこんだ人にしか見えない景色があります。帰ってきたら、心からのごちそうをふるまうと決めています。
この話をくわしく読む:ファーストペンギン 勇気を持って行動する人
「虎穴に入らずんば虎子を得ず」の由来と使い方を読む
第8位 まかぬ種は生えぬ(まかぬたねははえぬ)
意味:努力しなければ、良い結果を期待しても得られない。
2020年4月、私は新任の教頭になりました。初めての仕事で手いっぱいの中、3〜6年生の書写の授業も担当することに。正直に言います。2、3日は「なんでやねん」とウジウジ苦しみました。
そのとき、思ったのです。「待てよ。せっかくやるならば、面白いことやってやろう」。
決めたのは、書家になること。人から字がきれいと言われたことは、一度もありません。それでも、毎朝5時30分ごろに書の動画を配信すると決め、書家デビューの日も自分で決めました。
種をまかなければ、芽は出ません。何より見せたかったのは、大人が目標に向かって夢中になる姿です。「せっかくやるなら」。この言葉が、いやな仕事を、わくわくする仕事に変えてくれました。
この話をくわしく読む:新任教頭が書家になる
「まかぬ種は生えぬ」の由来と使い方を読む
第9位 案ずるより産むがやすし(あんずるよりうむがやすし)
意味:ものごとの前はいろいろ不安になるが、実際は意外に簡単にできるということ。
英語の大会に出る。中学1年生レベルの私には、無謀な話でした。
背中を押してくれたのは、主催の立石剛さんの「英語力がなくても大丈夫ですよ」という言葉です。お手本の音声を30秒ずつに分け、10回ほど聞いては自分の声で録音する。丸1日かけて、30個つなぎました。発音はカタカナ英語のままです。それでも、予選は2位で通りました。
本番のシンガポールでは、会場のみなさんが私のカタカナ英語をあたたかい目で聞き、一緒に「Good job!」と声を出してくれました。英語で人とつながれた。それが何よりうれしかった。心配していた壁は、やってみると、ずっと低いものでした。
この話をくわしく読む:英語のセミナーコンテスト、予選を突破する方法
「案ずるより産むがやすし」の由来と使い方を読む
第10位 温故知新(おんこちしん)
意味:昔のことをよく学んで、そこから新しい考えや知識を見つけること。
兵庫県三田市にも、空襲がありました。1945年7月19日の午前、米軍の戦闘機が小学校や下校中の子どもたちを撃ち、児童4人と女性1人が亡くなりました。
戦後80年の2025年、私たちSUNPEACEは「三田空襲を聞く会」を開きました。6月の第1回には、市民約60名が集まりました。当時、国民学校3年生だった志儀喜代美さんが、会場で語ってくださいました。
体験を語れる方は、年々少なくなっています。古いことを学ぶのは、昔を懐かしむためではありません。今の平和が、どれほど大切なものかを知るためです。子どもたちには、聞けるうちに、聞いてほしい。この言葉には、そんな願いをこめています。
この話をくわしく読む:戦後80年「三田空襲を聞く会」の記録
「温故知新」の由来と使い方を読む
残りの40個(テーマ別)
ここからは順位をつけず、テーマごとに紹介します。選んだ理由を、ひとことずつ添えました。
がんばる力(9個)
- 七転び八起き(ななころびやおき)
転ぶことより、起き上がることをほめたい - ちりも積もれば山となる(ちりもつもればやまとなる)
毎日の小さな努力の値打ちが見える - 好きこそものの上手なれ(すきこそもののじょうずなれ)
好きなことが一番の先生だと気づける - 雨垂れ石を穿つ(あまだれいしをうがつ)
小さな力でも、続ければ大きなことができる - ローマは一日にして成らず(ろーまはいちにちにしてならず)
大きなことには時間がかかると、あせる子に伝えたい - 思い立ったが吉日(おもいたったがきちじつ)
やりたいと思った今が、始めどき - 大器晩成(たいきばんせい)
今できなくても大丈夫、と言ってあげられる - 急がば回れ(いそがばまわれ)
近道より、確かな道が早いこともある - 勝ってかぶとの緒をしめよ(かってかぶとのおをしめよ)
うまくいった時こそ、気を引きしめる
人を大切にする心(11個)
- 親しき仲にも礼儀あり(したしきなかにもれいぎあり)
仲がよいからこそ、言葉を大切にしたい - 三人寄れば文殊の知恵(さんにんよればもんじゅのちえ)
力を合わせる学びの楽しさを語れる - 人のふり見てわがふりなおせ(ひとのふりみてわがふりなおせ)
人を責める前に、自分をふり返る - 己の欲せざる所は人に施す勿れ(おのれのほっせざるところはひとにほどこすなかれ)
いじめをしない心の土台になる言葉 - 義を見てせざるは勇なきなり(ぎをみてせざるはゆうなきなり)
見て見ぬふりをしない勇気を伝えたい - 一寸の虫にも五分の魂(いっすんのむしにもごぶのたましい)
小さな命にも、どの人にも、心がある - 縁の下の力持ち(えんのしたのちからもち)
見えないところでがんばる人に気づける子に - 朱に交われば赤くなる(しゅにまじわればあかくなる)
だれと過ごすかで、自分も変わる - 渡る世間に鬼はなし(わたるせけんにおにはなし)
世の中には、助けてくれる人が必ずいる - 口はわざわいの門(くちはわざわいのかど)
SNSの時代にこそ、言葉の重さを知ってほしい - 目は口ほどにものを言う(めはくちほどにものをいう)
言葉にならない友だちの気持ちに気づく
学びつづける姿勢(9個)
- 聞くは一時の恥聞かぬは一生の恥(きくはいっときのはじ、きかぬはいっしょうのはじ)
「わかりません」と言える子を育てたい - 百聞は一見にしかず(ひゃくぶんはいっけんにしかず)
自分の目で確かめる大切さを伝えたい - 実るほど頭をたれる稲穂かな(みのるほどこうべをたれるいなほかな)
学ぶほどに謙虚な人になってほしい - 井の中の蛙大海を知らず(いのなかのかわずたいかいをしらず)
広い世界を見に行こう、と語れる - 過ち改むるにはばかることなかれ(あやまちあらたむるにはばかることなかれ)
まちがえたら、直せばいい - 他山の石(たざんのいし)
人の失敗からも学べる - 少年老い易く学成り難し(しょうねんおいやすくがくなりがたし)
今の時間の大切さを伝えたい - 蛍雪の功(けいせつのこう)
苦しい中でも学んだ人の話が心に残る - 習うよりなれろ(ならうよりなれろ)
まずやってみることの大切さが伝わる
よりよく生きる知恵(11個)
- 笑う門には福来る(わらうかどにはふくきたる)
笑顔のある学校を作りたいという願いと重なる - 人間万事塞翁が馬(にんげんばんじさいおうがうま)
悪いことも、よいことに変わるかもしれない - 雨ふって地固まる(あめふってじかたまる)
けんかのあとに、もっと仲よくなれる - 備えあれば憂いなし(そなえあればうれいなし)
準備することの大切さを、防災にもつなげられる - 立つ鳥あとをにごさず(たつとりあとをにごさず)
卒業の前に語りたい言葉 - 時は金なり(ときはかねなり)
一日の時間の使い方を考えられる - 可愛い子には旅をさせよ(かわいいこにはたびをさせよ)
保護者にも一緒に読んでほしい - 人は見かけによらぬもの(ひとはみかけによらぬもの)
見た目で人を決めつけない - 負けるが勝ち(まけるがかち)
ゆずることが強さになる時もある - 終わりよければすべてよし(おわりよければすべてよし)
最後までやりきる気持ちを育てる - 楽あれば苦あり苦あれば楽あり(らくあればくありくあればらくあり)
つらい時の支えになる
ことわざで、親子の会話が変わる
ことわざは、短い言葉の中に、昔の人の知恵がつまっています。お子さんが失敗した日に「失敗は成功のもと」と、友だちとけんかした日に「雨ふって地固まる」と言ってみてください。説教より、ずっと心に届きます。
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